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最高裁判所第二小法廷 昭和32年(オ)1096号 判決 1961年7月14日

主文

原判決を破棄する。

本件を大阪高等裁判所に差戻す。

理由

上告代理人堀川嘉夫の上告理由第二点について。

農地買収計画につき異議・訴願の提起があるにもかかわらず、これに対する決定・裁決を経ないで爾後の手続を進行させたという違法は、買収処分の無効原因となるものではなく、事後において決定・裁決があつたときは、これにより買収処分の瑕疵は治癒されるものと解するのを相当とする(昭和三四年九月二二日第三小法廷判決、民集一三巻一一号一四二六頁参照)。

本件についてこれをみるのに、原審の確定した事実によれば、兵庫県農地委員会が本件買収計画を承認し、また兵庫県知事が被上告人に対する買収令書を発行した当時は、まだ同委員会による本件買収計画についての訴願裁決がなされていなかつたとはいえ、右承認は訴願棄却の裁決があることを停止条件としてなされたものであり、訴願棄却の裁決もその後行われたというのであるから、訴願棄却の裁決がなされる前に承認その他の買収手続を進行させたという瑕疵は、その後訴願棄却の裁決がなされたことによつて治癒された、と解すべきである。しかるに、原判決が右の瑕疵は重大なものであつてその後における訴願棄却の裁決をもつてしては到底治癒され得ないものであると判断したことは、自創法八条、九条の解釈を誤つた違法があり、ひいてはまた、原審は本件買収処分には(イ)右の重大な瑕疵のほかに、(ロ)農業用施設に該らないものを該ると誤認した違法、(ハ)解放農地のための利用度という点からみても不必要・不相当のものを買収した違法があり、これらの違法が集積して全体として重大な瑕疵のある処分と認むべきであるという理由で、被上告人の本訴請求を認容したものであるが、右(イ)の瑕疵を除外してもなお右(ロ)、(ハ)の点が本件買収処分を無効ならしめる重大かつ明白な瑕疵に該るかどうかについて審理判断をなすべき必要があり、原判決はこの点につき審理不尽の違法に陥つたものというほかなく、以上の違法は、判決の結果に影響を及ぼすこと明らかであるから、論旨は結局理由あるに帰し、原判決は、爾余の論点についての判断をまつまでもなく、破棄を免がれないもの、と認める。

よつて、民訴四〇七条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 藤田八郎 裁判官 池田克 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一 裁判官 山田作之助)

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